自然農法

tmagri2008-08-29

 8月が終わっていないのに急に涼しくなって、もう秋かな、と思って焦ってしまった。
今年の天候はおかしいですね。豪雨も高知の定番だったのですが、雨の降る原因といいますか、原理が違う。つまり気圧配置。東海、北陸、関東が被害をうけて、こっちはゲリラ豪雨だけでも、いつもよりおとなしい。西からではなく東から流れ込んでくるし。んーここ数年でこんな感じは無かったような。台風の気配もないし。9月、10月はどうなるのか、要注意です。

 先日、福岡正信氏が95歳で亡くなられたというニュースがありました。有機農業に携わる者だけでなく、多くの人がご存じではないだろうか。自然農法、無の哲学を70年実践し、世に知らしめただけでなく、不耕起、無除草、無肥料、無農薬の考え方は多くの人の生き方にも影響を及ぼしたと思う。

 私が「わら一本の革命」を読んだのは近畿大学在学中の今から20年前(!あれ、もうそんなになるんか!)。そのときはまさか有機農家になるとも、なろうとも思わず、環境問題の延長線上に農業があった。だから、かえってインパクトが強烈ですぐに読んでしまった覚えがある。近畿大学では昔、福岡正信氏の圃場を調査している。他の著書やいろいろ読んでみて、当時はどう感じたか大部分忘れてしまったが、福岡氏は哲学者であり、その哲学を不耕起連続直まきの圃場で実践し、証明して見せたんだと読み取った思う。だからなおさら、言葉や文章だけで「人知一切無用」と説かれるよりも、インパクトがあったんだと思う。
 そうは言われても、技術者にあこがれ、目指していた自分にとっては、人知一切無用じゃあどうすればいいんだろうか、いつかは自分も自然の中でそうなればいいなあ、で終わってしまったように思う。しかしそのとき自然農法は深く自分の中に刻まれた。

 つとめをやめて農業を始めたときは、有機農業で経営を成り立たせる事を目標に掲げていたから、相当現実的な手法でここまでやってきた。自然農法は個人の哲学を実践していく場だと思って、私は「輪作耕起、抑草除草、有機肥料、無農薬」という自然農法とは違う農業を行っている。しかし、自然の摂理や原理原則は同じはずだ。だから結局、有機農業は自分の生き方にかかってくると思っている。自然は自然のままで、その距離の取り方が農法の違いではないだろうか。

 有機農業を始めてから、見学や就農相談に来る人で、福岡氏の自然農法にあこがれたり、感動したことが、就農の動機になった人がホントに多かった。(最近はあまりいないが)やりたいと言い張って去っていった人もいたし、あきらめた人もいた。実際に福岡氏に弟子入りを志願して断られた人や、話をしてきた人から、実際の農場の話を聞くことも出来た。でも結局同じ四国にいながら私は見学する事もお会いしてお話をお伺いすることもなかった。4冊の著書も大学以来読まずに本棚にある。

 そしていま、有機農業を10年やって、あらためて読んでみたらきっと全然違う感じ方や発見をするだろう。いつか読もうと思っていてもなかなか手に取れなかったが、近々再熟読してみようと思う。
 有機農家の先輩から「有機農家は同じ山をみんな違う道からのぼっている」という名言を聞いたことがある。ホントに名言である。その山に頂上があるとは思えないが、自然農がどこにあるのか分かるかもしれない。もちろん、農法の方法論(登り方)ではない。無の哲学が自分の道のどこにあるのか、探す意味もある。