ウイルス その2
ウイルスの対策も分かっているけど、実際どう行動したらいいのかはわからないと思う。
こればっかりは、防護服を着て生活できないし、警戒にも限界はあるし、感染したかどうかもしばらくは分からないし。潜伏期間という厄介なもののせいで対策の効果があるのかないのか、余計にわかりにくくなっている。そこで、一つ大切なことがある。
人間はよくわからないことに出会ったり、非常時、非日常に放り出されると、攻撃的になるか、見ないことにするか、逃げるか、という反応をする。
ストレスや恐怖から攻撃的になるのが一番良くない。怒りは非生産的で何も得るものはない。周りにも迷惑をかける。これは一番気を付けたいことだ。
見ないことにするのは、正常性バイアスといい、これは誤報だ、大丈夫だ、自分には関係ない、と思ってしまう認知バイアスのことだ。これは危険をさらに深めてしうので注意しなければならない。
そして、逃げること、は守りに徹するという意味もある。実際に、はいさよなら、とは言えないときは守りに徹する。わからないことに対処する一番安全な方法ではないだろうか。わからないものを無理に分かろうとしてストレスを深めるよりは、目の前の対策を注意深く実行するしかないんだと思う。
幸い、戦争や震災と違って、感染し発病しない限りは、健康で衣食住には困らない環境は継続されているのだ。
昔はウイルスのことを「ビールス」と言っていた。インフルエンザビールス、である。(ちなみに農家の間では植物のウイルス病のことを大まかにひとくくりにして「バイラス」と言ったりしている。「バイラス」とはウイルスの英語読み)
「ビールスにかからんようにせなあかんで」とよく言われていたし、インフルエンザとも言ったが「流感」とも言った。熱が出たら「流感ちゃうか?」と母が心配そうによく言ってたのを覚えている。
思い起こせば、目に見えないウイルスに対処する方法は、子供の時から教わっていた。手洗い、うがいは口やかましいほど言われていたし、学校には必ず石鹸が水道にぶら下がっていて、給食の前だけでなく、休み時間外で遊んで戻ってきたときも手を洗う指導がされていた。めんどくさいのでやらなかったり、ハンカチではなく服で拭いたりしてたら注意される。
もちろん、家に帰ったら「手を洗いなさい」「うがいをしなさい」は必ず言われていて習慣づけられていた。
また、インフルエンザによる学級閉鎖はたびたび起こった。インフルエンザが流行すると「はい、5分間の換気」とかいって休み時間に窓を全開にさせられ、寒くてとてもいやだった。さらに流行が進み欠席者が増えると、朝に保健の先生が来て全員に検温をし、熱が出ていたのが数名出て、「はい、今日からこのクラスは学級閉鎖です」と言われて、授業せずに家に帰されたときはとてもうれしかったので今でも鮮明に覚えている。
このコロナ騒動で思い出してみると、子供の時には繰り返しインフルエンザ予防については教育を受けていたし、小学校での対処方法は正しく行われていたと思う。
ふと、なぜこんなに念入りだったんだろう、と記憶をさかのぼってみると、子供の時に聞いていた「A香港型」というワードから調べてみた。
すると、1968年香港で発生した新型インフルエンザはパンデミックを起こし、アメリカで400万人が死亡し日本でも13万人の感染と4000人の死者を出したということだ。香港かぜ、香港かぜ、ニュースではA香港型が、、とさかんに言っていたのはこういうことだったのだ。
そしてさらに、1977年ソ連かぜ、と言われていた新型インフルエンザがパンデミックを起こし、世界で2000万人の方が亡くなっている。ソ連かぜ、も子供の時よく聞いたワードだ。
冬になると、学校でも家庭でも、口うるさく言われていたのはこういう背景があったんだと、いまさらながら分かった。単に「バイ菌」でおなかを壊すから、程度に当時は思っていたのだが、それだけではなかったと思うと、納得がいった。
インフルエンザは抗体やワクチンができるまでは、まさに今日のコロナウイルスと同じようにたくさんの死者を出し、パンデミックの脅威をまざまざと見せつけられた歴史があったのだった。
だから、自分たちの世代は、うがい手洗い、換気、予防注射、など基本的な公衆衛生管理をおしえられていたのだろうと思う。もし、その教訓のおかげで知らず知らずのうちに手洗いをこまめに行うことが、今日の日本での感染者数抑制につながっているとしたら良かったと思うし、そうではなかっても、死者を出しつつインフルエンザと戦っていた自分たちの子供の時の教訓は生かさなければいけない。
外から帰ったら石鹸で手あらい、うがい、食べる前にも石鹸で手あらい。ハンカチを持っていること。くしゃみ、咳をする人はマスクと休養。
残念なことに、まだ、風邪と同じだから高齢者だけ気を付けてればいいとか、コロナはインフルエンザより死者が少ないから怖くないとか、いまだにいっているアホウがいるが、決して自分が良くかかっている風邪レベルと思ってはいけない。
インフルエンザはもともとは風邪とは比べ物にならないくらい恐ろしい病気で、その病気の中でも、新型インフルエンザ、今日の新型コロナウイルスのパンデミックはワクチンも抗体も獲得していない限り、まだまだ脅威であり長い戦いになるのだと思う。