桜好き

tmagri2006-03-25

むらかみ農園のある日野地は今ようやく桜(ソメイヨシノ)が咲き出した。
それよりもずっと早く、薄墨のしだれ桜(写真)が咲いている。
この桜は棚田の上の、山の縁に一本だけひっそりと咲く名木である。普通のしだれ桜とは違う品種らしく、枝はそんなには垂れずにやや下がるくらいで、花色も薄い。樹齢は地元の人の記憶では7−80年らしい。コメントに書いてくれたように、この桜は晴天の満開より、雨の中か、早朝のもやのかかっているときが出色だ。回りの風景とその姿が、にぎやかさとは無縁の世界にあって、雨の中では一層現実離れした感じがする。
毎年、この桜の花は短い。それは、ソメイヨシノより早く咲くために、春の大雨や春一番で、あっという間に散ってしまうのだ。今年は満開のあと大雨に遭わないので、今も咲き誇っている。この桜は自分の中で、今までになかった桜の美しさを持っている。
自分は実は無類の桜好きだ。中学高校大学といつも見てきた、西宮の夙川の桜と満池谷の桜が別格で、思い入れも深い。夙川の桜にかなうものはない。
しかし、それぞれの時で、それぞれの仲間と、それぞれの場所で、自分には桜が特別なものとして存在している。どういう訳かわからないが、見に行くときは楽しんでいるのだが、桜の存在は寂しくて切ない記憶として残ってしまう。満開になる時節柄なのだろうか。夙川に始まり、石神井公園善福寺川、代々木公園、元荒川、馬事公苑、山梨の武田神社、その他数限りなく各地の桜は記憶に残っている。
松葉川温泉の奥にある森が内というところに、桜公園がある。彼岸桜とソメイヨシノコントラストが美しい。昔、営林署があって、林業で栄えた頃の森が内の写真を見る機会があった。集落があり、長屋があり、学校があり、トロッコがあり、たくさんの人がいた。
いま、その集落跡が桜公園になり、荒れ果てた雑貨屋が朽ちかけて残っている。桜の中に、にぎわいも見てきたであろう大きな銀杏の木が一本残っている。高知にきてもやはり桜はなにか寂しく切ないものに見えてしまう。