M子は5時間生き埋めになっていた。地震発生から家の下敷きになったときに、手で顔をかばったのか、動けなくなっただけでなく、声が出せない状態だったそうだ。
 兄が消防に助けてくれるように要請したが、呼びかけに返事がないので妹さんはたぶんだめだろう、可能性のある人から順に救出する、ということだったそうだ。そのやりとりは全部聞こえていたそうだ。しかし声が出ない。その後、兄が近所の人などを呼んできてくれて、がれきをのけて助けられたそうだ。その間5時間。上空を飛ぶヘリコプターの音がうるさかった、とか言っていたが、その間の心情、本人以外では分からないだろう。
 その後、救出されてから母親は頭に怪我をして病院に行ったので、ついて行く。母親は入院。そこで、自分は帰る家がないから病院のロビーに寝ても良いですか、といい、他のけが人達とともにそこで一夜を明かす。そしてたまたま巡回してきた医師に、足の怪我をみてもらい、これは大変だ、ということで即入院。クラッシュ症候群(長時間圧迫されていた怪我による重篤な全身症状)とのことだった。このたまたまが無ければ、死んでいたかもしれない。
 病室を出てからも、何とも言いようのない体験に圧倒されていた。